老犬の床ずれ(褥瘡)は何日でできる?予防と受診の目安
「寝たきりの老犬の腰やひじが赤くなってきた」——それは床ずれ(褥瘡)の始まりかもしれません。床ずれは同じ姿勢が2時間以上続くと始まり、気づかずに数日たつと皮膚が破れます。この記事では、できるまでの時間の目安、できやすい部位、赤み・皮膚が破れる・骨が見えるの段階別の見分け方、今日からできる予防(体位変換の間隔・マットの選び方・洗浄と保湿)、そして動物病院に行くべき目安をまとめます。
※本記事は一般的な情報提供です。診断・治療は必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
犬の床ずれ(褥瘡)は何日でできる?
床ずれは「何日」というより「同じ場所が何時間、圧迫され続けたか」で決まります。骨が出っ張った部分に体重がかかり続けると、その下の毛細血管がつぶれて血が通わなくなり、皮膚と皮下組織が傷んでいきます。
| 圧迫が続いた時間 | 皮膚に起きること |
|---|---|
| 1〜2時間 | 一時的な赤み。姿勢を変えれば数分〜数十分で消える |
| 2時間以上 | 押しても白くならない赤みが残る(ステージ1/初期サイン) |
| 数日 | 皮膚が薄くむける・水ぶくれ・浅い傷になる(ステージ2) |
| 1〜2週間 | 皮下組織まで届く深い潰瘍になる(ステージ3以降) |
※あくまで目安です。痩せて骨が目立つ犬、麻痺のある犬、低栄養・脱水がある犬、硬い床で寝ている犬では、もっと短い時間で進みます。「昨日は何ともなかったのに今日赤い」ということは珍しくありません。
その赤みが床ずれかを見分ける方法
赤くなっている部分を、指の腹で5秒ほど軽く押して離してみてください。
- 押した所が白くなり、離すとすぐ赤みが戻る → 一時的な圧迫。まだ回復できる段階です
- 押しても白くならない → 血流が戻っていないサイン。床ずれの初期と考えて対応してください
犬の床ずれができやすい部位
床ずれは「骨が皮膚のすぐ下に出っ張っている場所」にできます。寝ている姿勢によって当たる場所が変わるので、姿勢ごとに見る場所を変えるのがコツです。
| 寝ている姿勢 | 重点的に見る部位 |
|---|---|
| 横向き(横臥) | ひじ、肩甲骨、あばら骨、腰骨(腸骨)、大転子(太ももの付け根の出っぱり)、かかと、外くるぶし |
| うつ伏せ(伏臥) | 胸骨、ひじ、ひざ、あご |
| 仰向け(仰臥) | 背骨のでっぱり、しっぽの付け根(仙骨)、後頭部 |
毛があると赤みは見えません
1日1回、体位変換のタイミングで毛をかき分けて皮膚を直接見る、指の腹で触って熱感・硬さ・へこみを確かめる習慣をつけてください。特に長毛種は、皮膚が破れるまで気づけないことがあります。
床ずれのリスクが高い状態
麻痺・運動機能の低下(自力で寝返りが打てない)、低栄養・脱水、皮膚の乾燥、排泄物による皮膚の汚染があると、床ずれのリスクが上がります。当てはまる場合は、下記の目安より短い間隔でのチェックと体位変換をおすすめします。
段階別の見分け方:赤み・皮膚が破れる・骨が見える
- ステージ1/赤みだけ:押しても白くならない赤み。皮膚は破れていない。熱を持つ・硬い・逆にブヨブヨすることも。→ この段階なら、圧を抜くだけで戻せる可能性が高い
- ステージ2/皮膚が破れる:水ぶくれ、すりむけたような浅い傷(表皮〜真皮)。痛みがある。→ 動物病院へ
- ステージ3/穴があく:皮下組織まで届いた深い傷。→ 動物病院へ
- ステージ4/骨や筋肉が見える:筋肉・腱・骨が露出。感染して全身状態に影響することがある。→ 至急、動物病院へ
見た目が小さくても油断できません。床ずれは皮膚の表面より内側のほうが広く傷んでいることが多く、小さな穴の下に大きな空洞ができている場合があります。
今日からできる予防① 体位変換の間隔
最も効果があるのは、同じ場所を圧迫し続けないことです。
目安は2〜3時間ごと。赤みが出たら1〜2時間ごと
夜間も含めて、同じ姿勢が2〜3時間を超えないようにします。すでに押しても白くならない赤みがある場合は、その部位に体重がかからない姿勢を選び、間隔を1〜2時間に短くします。ローテーションの例は「左横向き → うつ伏せ(または仰向け) → 右横向き」です。
やり方のコツ
- 引きずらない:体を引きずると「ずれの力」で皮膚がよじれ、かえって床ずれを悪化させます。バスタオルを体の下に敷き、持ち上げるようにして動かします
- 姿勢を保持する:丸めたタオルやクッションを背中・前肢の間・後肢の間に入れ、骨の出っぱりが直接床に当たらないようにします
- 記録する:「何時にどの向きにしたか」をメモに残すと、間隔が空きすぎるのを防げます。受診時にも役立ちます
今日からできる予防② マット(寝床)の選び方
体位変換とセットで効くのが寝床です。ポイントは「沈みすぎず、底つきしないこと」。
- 厚み:ウレタンマットなら厚み4〜5cm以上が目安。ただし数字より確実なのは実測です。手のひらを犬の腰の下(マットの下側)に差し込んで骨が手に当たるなら「底つき」しています。厚みが足りません
- 素材:体圧分散マット・エアマット・ウォーターベッドなどが使われます。人用の介護用品を流用する場合、犬の体重では沈み込み方が変わるため、必ず実際に寝かせて底つきを確認してください
- 避けたいもの:硬いプラスチックのベッド、薄い毛布1枚だけ、ぬれたまま放置されたペットシーツ
- 清潔と乾燥:汗や尿でぬれた寝床は皮膚をふやけさせ、床ずれを一気に進めます。カバーは洗い替えを複数用意し、ぬれたらすぐ交換します
- ドーナツ型クッションの注意:患部を穴に入れる「円座」は、周囲を強く圧迫して血流をさらに悪くすることがあります。使う場合は獣医師に相談してください
洗浄と保湿の手順
※皮膚がすでに破れている場合は、自己判断でケアする前に必ず獣医師の指示を受けてください。以下は赤みの段階と、指示を受けたあとの日常ケアの手順です。
- 汚れを落とす:ぬるま湯(体温くらい)または生理食塩水で、こすらずに流します。強くこするとかえって皮膚を傷めます
- 消毒薬は常用しない:イソジンやオキシドールなどを毎日使うと、傷を治す細胞まで傷めることがあります。使用は獣医師の指示があるときだけに
- 水気を取る:清潔なガーゼやタオルで、拭き取るのではなく押さえるように水分を取ります
- 部位で使い分ける:乾燥した健康な皮膚には保湿剤(乾いた皮膚は破れやすい)。おしり周りなど尿・便がつく所には撥水性の皮膚保護クリーム(バリアクリーム)でふやけと刺激を防ぎます
- 排泄後は毎回きれいに:尿や便が皮膚についたままだと数日でただれます。排泄のたびに洗い流し、しっかり乾かします
動物病院に行くべき目安(チェックリスト)
次のどれかに当てはまったら受診してください。
- ☐ 皮膚が破れている・水ぶくれがある・穴があいている
- ☐ 押しても白くならない赤みが、体位変換を増やしても3日たって消えない
- ☐ 傷から液が出る/膿が出る/においがする
- ☐ 傷の周りが熱い・腫れている・広がってきた
- ☐ 元気がない・食欲が落ちた・発熱している
- ☐ 触ると強く痛がる、その部位をなめ続ける
- ☐ 筋肉や骨が見えている(至急)
受診時に持って行くと診察が早く進むもの
- 患部の写真(気づいた日からの経過が分かるよう、日付が残る形で数枚)
- 体位変換の記録(間隔・姿勢)
- いま使っている寝床・クリーム・薬の情報
- 食事の内容と食べている量(低栄養は治りを遅くします)
床ずれのケアを体系的に学びたい方へ
床ずれの予防は、寝床づくり・栄養・排泄ケア・皮膚の観察がひとつながりになった「介護」の一部です。老犬飼養介護士試験では、シニア犬の在宅ケアを級ごとに整理して学べます。
- 3級:日常ケアと生活環境。「寝床の選び方:床ずれ予防マットの活用」が出題範囲に含まれます
- 2級:栄養管理と健康チェック。皮膚の回復に関わる食事の知識を扱います
- 1級:認知症ケア(DISHAAスコアリング)と介護計画
- 上級:終末期の緩和ケア。疼痛評価(CBPI)・看取りの準備・グリーフケアを扱います
※受験は3級から順に進みます。2級以上を受験するには、ひとつ前の級の合格が必要です。
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